| 「 八 塔 寺 今 昔 物 語 」 岡山県和気郡 吉永町ふるさと村での活動報告 特定非営利活動(NPO)法人あとりえ はらっぱ代表 ふじわら やすえ ◇ 茅葺き家屋へのかかわり 「文化、アート」を中心としながら最近では青少年育成などに関する事業、まちづくりに関する事業等も行うようになってきました。その中で吉永町より、「茅葺き建築物に関するソフト事業でかかわってほしい」との声をかけていただいたのが昨年(03年)8月でした。それ以前には茅葺き建築物等に直接関わる事業は行っていませんでしたが、メンバーに、現代劇だけでなく史実を元にした歴史劇なども手掛ける劇作家や、日本古来の伝統をふまえたデザイン等を強く意識するデザイナーなどが加わっていたことから、この事業への心理的な距離感を感じることなく受け入れる ことができました。 ◇「はらっぱ」ならではの視点で 茅葺きに関わるなかで大切にしたいと思ったことは、おおまかに次の4点をあげることが出来ると思います。 1 茅葺き家屋とそこに住む人の問題解決につながる視点を忘れないように。 2 茅葺き家屋へのアウトリーチ事業を行う。 (茅葺きを楽しむという提案をしながら、茅葺きに関する理解や関心を深めてもらう) 3 八塔寺や吉永町特有の問題に取り組む。 4 歴史や文化からの視点を持つ。 そうして今回の草葺きシンポジウム準備委員会のみなさんや行政関係の方、地元の多くの子どもさんたちや地元青年団の方に多大な協力をいただいて行ったのが八塔寺今昔物語(資料1)でした。(ちょっと意外なうれしいニュースとしては、この事業への参加を、岡山市内周辺に住む10代、20代に呼びかけたところ、予想外に好反応があったことです。しかも、ただ参加して楽しみたいというだけでなく、スタッフとしてなにか役に立つことはないかという申し出が多かったので声をかけた側の責任を感じるとともに、新たな可能性を感じました。) ◇ こどもたちを巻き込む作戦 その1 地元の妖怪・伝説探し! まず、地元に残る言い伝えや伝説を探す所からはじめました。古い土地柄だけあって、その物語性の豊かなこと!メンバーで夢中になって吉永町史を読みあさりました。そして印象の強かった事柄を話し合い、アイデアを出し合いました。その中から「ぐひん」「べろだし」「おどくうさま」などについて、地元のこどもたちからデザインを募集し、ステキな作品をスタンプにしてイベント中にスタンプラリーをすることにしました。どれくらい反応があるのか見当がつかなかなかったのですが、箱をあけてびっくり、応募者多数&優秀作品の多さに、選考会は大難行でした。(「ぐひん」や「べろだし」について詳しくは「はらっぱ」の展示の方をご覧ください (^_^) ) ◇こどもたちを巻き込む作戦 その2 出演者募集! また、地元の文化資源を活かす方法として、この豊かな物語をたくさんつないで地元の人と一緒に現代の新しい神楽を作ろうと考えました。メンバーとして参加してくれていた脚本家に 1 八塔寺ふるさと村全体を舞台とし、その地形からとれる場の意味、音の響きを十分に活かす 2 地元の人から出演者を公募する 3 地元に残る[神根獅子舞]を劇中劇として出演を依頼し、[寿ぐ(言祝ぐ:ことほぐ)をテーマとするという注文をつけて脚本と演出を依頼しました。地元町内に出演者を募集して練習し、下見や話し合いを重ねた結果、以下のような特徴をもった神楽を制作上演することができました。 1 日本の伝統芸能のひとつ文楽の手法を取り入れ、出演者は、演じ手と語り手の二人一役となって登場する。 2 今も現存する八塔寺の吊り鐘に装飾されている龍をもとに全長二十メートルの真っ赤な大龍が登場。この龍は、日本の伝統工芸である竹細工の「籠編み」の手法を参考に、竹を紙に替えて、このNEO神楽のために制作された新作もの。また龍を操作演じてくれたのは地元青年団のみなさん。 3 地元の人によって永く伝えられ演じられてきた吉永の獅子舞も、その龍の嘆きや怒りを鎮める大切な役として、物語中に登場。 4 音楽は和太鼓を中心とした打楽器で構成したオリジナル作曲。 5 演奏の一部に、一般参加者による当日参加も可能とする。 ◇ 参加者だけの楽しいおみやげ! 宿泊体験の日に、吉永町の土を使って、参加者一人一人が、成形してその場で七輪で焼き上げる土笛を作りました。七輪で真っ赤に焼き上げるまではドキドキでしたが、「ぽー、ぽー」とかわいい音が出た瞬間には参加者がどよめくほどの好評でした。何人かはいくつかの音階を出すことにも成功していました。また、焼く過程での化学変化に興味津々の子どもさんがいてその会話が楽しかったり、焼成時の焼き縮みで音が出なくなった女の子が、吹き口にちょっと紙を当てるだけで音が出た時のうれしい顔にはこちらも感動しました。(その後そのお子さんは、当てた紙を止めるまで眠ることが出来なくて、お父様は凍てつく真夜中、車までセロテープを取りにいかれたのだそうです….構造とか風の当たる角度の説明や理屈は後からついてくるもので、こういう経験をしてくれたことがうれしかったとお話ししてくださいました。) ◇ 「景観」という視点への気づき。また、茅葺きという「サイクル」について事業を実施する中で、たくさんのことをたくさんの方から教えていただきました。 「草葺きというのはただ単に「人の住む建造物」というだけでなく、その土地で育った[草]と[木]と[土]と[石]で構成されていて、朽ちるとその土地に帰る (還る)のものなのだ」という言葉はとても新鮮でとても感動しました。 それを体験の中から強く感じたのが[茅場つくり]でした。茅葺き職人の方や地元の方に講師をお願いをして、まず茅についての説明、古茅と新茅の見分け方、鎌の扱い、刈った茅を束ねる藁ひものない方、束ね方、さらに、束ねた茅束を束ねてつくる「まぐろ(!)」の作り方など。こうしてたくさんの[手]を経て、草が屋根になる、そしてそれが途切れては在り得ない自然のつながりなのだと象徴する「景観」という視点にあらためて気づいたのでした。 ◇人の軌跡が文化であること。 村内を移動するとき、日当たりの良い斜面に小さなお墓群があるのに気づきました。そして、茅刈りを教えてくださったM氏の言葉を思い出しました。その方は、参加者の人たちとの自己紹介の時に、「今年80才になるまでに、戦争に従軍されていた2年以外はここを離れたことことがない」ということをとても誇らしげに語っていらっしゃったのでした。そして私はその仲良く肩寄せ合うお墓たちを見た時、ここで生まれた人たちは、ここで採れたものを食べ、利用して活かし、そして何かを残し、ここで土に還るのだということにふいに思いが至り、深く深く感動してまったのでした。人は古来よりそのような営みや知恵を、つなぎ伝え続けてきたのだ、そしてここにはそれを今もとても健康なかたちでつないでいる方がいらっしゃるのだなぁと思うと、それは言葉にならないほどの感動だったのでした。この連綿と続く営み、あるいはそこから生まれてくる軌跡そのものが文化なのではないでしょうか。 まだ初年度でもあったため、積み残した多くの課題は残っていますが、これからも文化からの視点を使って様々なことに取り組んでいきたいと思います。 |
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