最初の絵画造形の教室としてのスタートから25年目となりました。
最初は小さな子供達ばかりで始まった画塾ですが、その子達が成長し大学受験をするまでになり
高等部の卒業生が出始めたのがちょうど10年前になります。
今回は、その卒業生であるボックス5期生のお二人が来てくれました。
ご本人達の了解を得て皆さんにも少しご紹介したいと思います。
【お二人の経歴】
トトロ(以下;と)
岡山県立倉敷南高校卒業
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科テキスタイルコース卒業
現在は自動車シートメーカーと老舗インテリアテキスタイルメーカーが共同出資して作った
乗り物のシートのテキスタイルデザイナーとして勤務。
メイト(以下;メ)
岡山県立大安寺高等学校卒業
武蔵野美術大学情報デザイン学科
現在は大手インターネット関連サービスの提供を行う企業に勤務
インタビュアーふじわら:こんにちは今日はよろしくお願いします。
メ・と:よろしくお願いします。
えー早速ですが、まずお二人は現役で武蔵野美術大学に合格されたわけですが、今、受験を振り返ってみて、どんな感じでしたか?
メ:必死でした。やべーな感しかなくて。高2の夏からで、そんなにうまい訳じゃないし。でも、僕の場合はダメだったら浪人しようと思ってたので良い意味で気楽だった。技術的には焦りがあったけど、だめだったら、もう一回やろーくらいな感じ。
と:デッサンはまだ感覚がある方で、基礎をボックスで叩き直してもらってグンとのびました。
でも色彩構成が壊滅的で、高校の先生にもまずいって言われるほどでした。3年生まで1~2回のコースで通っていて、スタートダッシュが遅れたせいもあって。3年 夏まで壊滅的だったんですけど、毎日午前中に色カード(※1)を30~40枚つくったり、雑誌の色を研究したり、使える色のバリエーションを増やすことに取り組ん でました。新しい武器を増やすというより、短期集中で自身の良いところと欠けているところを伸ばすようにしてましたね。
ふたりとも短期集中して結果を出されたわけですね。
そういえばお二人の共通点は、ふたりともご実家が自営業でしたね。ととろちゃんは確か…、お家の手伝いをしながら通ってたんですよね。それと、メイトくんは親御さんの方針でボックスの受講料はバイトで稼いで来てたから大変でしたね。
と:そんな事情もあってなかなかボックスに来ることができなくて、私も現役で受かるかどうか怪しかったんですよね。
そうでしたね(笑)。でもふたりともセンスはあったし、何より小論文が上手でした。メイトくんは文章が上手かった理由が面白くて…。(笑)
メ:ラノベとギャルゲーで育ったおかげです(笑)。
白いGの小論文(※2)は忘れられない!(会場爆笑)
(※1)色カード…..ボックスに来て、最初の色の授業で作り方を教えてもらいます。受験までに500色くらいコントロールできるようになるといいなぁ。
(※2)白いGの小論文…..武蔵野美術大学の基礎デザインへの受験対策として書いたもの。数々の合格をたたき出しているボックスの小論文指導ですが、その中でもメイトくんのこの小論文を越えるものはまだない….。(ボックス生はこの小論文を読むことができますよー。)(Gと言えどガンダムにあらず。)
さて、そんなお二人ですが、現役で受かって、東京の大学に行ってから大変だったことは?
と:あと、工デってすごく浪人多くて経験が豊富で、色んなジャンルの人が居て、逆 に自分はもの作りの経験が少ないので、素材も道具の使い方も分からなくて困りました。工デって頭よりまず手を動かせって感じのところがあって、経験がもの を言うんです。身にはなるけど、もっと大学に入る前に経験できていれば良かったなって思いました。現役合格の方が良いって皆思ってるかもしれないけど、現 役が必ずしも良いことではなくて、寄り道も時には必要だと思います。
メ:デ情も浪人結構多いんですよね。視デなんかを2浪した後に来たような人がゴロゴロいて、蓄積した知識や経験はもう雲泥の差。俺も1年くらい浪人した方 が良かったかな~っていうのは思いましたよね。急ぎすぎた感はちょっとあったかな。でも、浪人に比べて、現役は荒削りでもパワーのある面白いもの作ってる 人が多かった気がする。
と:わかるわかる!浪人組は落ち着いた作品をつくるけど、現役の方が元気があるもの作るよね。
メ:現役の方がパンチがある感じ。最初の頃は浪人すれば良かったかな〜ってふわっと思ってたけど、最終的にはどっちでも良かったかなぁ。
デ情の最初の頃というと、課題発見というチームでやる授業がありますよね。
メ:商品の企画から発表までを模擬的にやる授業ですね。
ブランディングの基礎みたいなものですか?
メ:いや、多分根底には「デザインとは」みたいなものが根底にあって、アートとか作品でなくって、世の中にあるなにかしらの課題に対して自分たちでどういう解決案を考えて、どうデザインして発表するかって、ビジネス目線で考えましょうみたいな授業でした。現役も浪人もまざりまざりのチームだったんですけど、その中で俺1位になって、どやーーー!!って感じ(笑)。
トラブルありつつも乗越えたんですよね。その時に「現役ならではの強みはあったかも」とお話を聞かせてくれましたね。どっちを活かすかは本人次第なんだなと思わせてくれました。さて、学校の授業以外はどんなことに取り組みましたか?
そういえば、ボックスの海外研修も引率やってくれましたね。
と:15人はきつかったです…。でも、大変だなって思うことも、面倒くさいって理由だけで放りだしたら勿体ないと思う。面倒なこと程、面倒くさがらずたくさんやって、立ち向かって欲しい。簡単に逃げ出したりしないでね。
なるほど。では、メイトくんの方はいかがでしたか?
メ:真逆(笑)。
えっ!?
メ:俺は自分に甘いんで、今楽しけりゃ良いやと思って、辛いものからは結構避けてた。
でも芸術祭の実行委員会をやってましたよね?
メ:あ、やりました(笑)。
そんな重要なところをスルーして(笑)。芸術祭ってどのくらいの人が来るんでしたっけ?
メ:3日で3万人です。
単科大学の学園祭では日本一の動員数なんですよね。実行委員会って展示や模擬店、ゴミの処理まで芸術祭の全てを担う組織で、その頂点をやっていたと。
では、その経験が就職で生かされる間の部分、つまり就職活動についてお伺いしたいと思います。具体的に、就職活動はどのような風に進めましたか?
メ:僕はスタート遅い方で、新卒で就職しなきゃってプレッシャーもなく…。就職できなくても、何かしらでなんとでもなるだろみたいな。周りは結構頑張ってる人もいるんですよ。就活終わるまで、このゲームやらない!とか決めてたり。でも、俺そういうの嫌で、もっと日常の生活の中に就活をスッと組み込ませたいみたいなって…。出た、この感じ(笑)。
変に肩に力を入れることもなく、ストイックになることもなく進められたわけですね。
メ:まさにそれです。僕たちの学年だと3年10月に会社説明会が封切りになったんですけど、それまで具体的な準備は一切してませんでした。職種も何も拘らずゆるゆる会社説明会に行って、楽しみながら2ヵ月くらいやっていくうちに「俺って職種より会社の理念とか雰囲気重視してんだな」ってことに気づいてから、受ける会社はすぐ決まりました。今の会社1 社しか受けたい会社なくて、一応練習にもう1社エントリーしました。でも結局今の会社に決まったから、もう1社は途中でやめたました。受けるのやめた会社、面接官と全然感覚が会わなかったし。
就活、振り返ると、必死こいてポートフォリオとか作らなくて良かったなーって。つくるのそんな好きじゃないし(笑)。
と:私はもう、メイトと正反対でド不器用のド根性なので…。
(笑)。
と:色々紆余曲折しながらの就職活動でした。でも、就活の意識はあったけど、実践はそんなにしなかったから スタートダッシュは遅かったかな。大学2年生からボックスでやってた就活セミナーに行ったり、学校に来てくれる会社説明会に出て、マナーやESとか予備知識はたくさん得られました。会社説明会では色んな会社や業界のことを知れるすごく良い機会でした。大体の会社説明会ってその会社のHPの内容のダイジェストが多いんですけど、それだけじゃ勿体ないから、積極的に質問をするようにしてました。あと、これ失敗談になるんですけど、企業を選り好みして、エントリーあまりしなかったので、惜しいことしたなって。
スタッフつっちー:高校生の皆、エントリーってわかる?
高校生一同:………?
そっか!えっと、就職活動の流れを簡単に言うと、まず経団連さんというところが、今年は何月から会社説明を解禁しましょうというスケジュールを組んでて、それまでは原則、会社説明会は行われないんですね。で、大抵の場合は会社説明会に行き、気に入った会社があったらチェックしておいて、その企業がHP上にエントリーを行いますといったら、皆一斉にエントリーシートを提出するんですね。
と:エントリーシートっていうのは、願書みたいな感じのものね。
そうそう。会社によって求めるものが違うから、自己推薦分を書いてきなさいとか、ポートフォリオをA4何枚にまとめなさい、とか会社ごとに色々決まってます。
と:学科もいるところあるから、みんな勉強しといてねー。
メ:これから大学受験の子たちに4年後の就活の話って…(笑)。
と:あっそうだった!でも、でも算数は!大事!!
でもまぁ、ムサタマに行ける学力があれば、就活の学科はなんとかなります。だから、皆学科はがんばりましょうね!それから、作品は作り貯めて記録を取っておきましょう。いざという時必要なものがパッと出せるのが、就活の基礎体力ですよ。
と:あ!それ!写真整理大事!!一度ボックスの就活セミナーで、 簡単にポートフォリオを作って、その時に今までの作品の写真を整理できたから、本番ですぐ使うための準備できてて良かった。写真ってすぐ何がどこにあるか分からなくなるし、フォルダ別けして、ちゃんと整理するの大事。みんなも、小さくて良いからプレポートフォリオは作っとくと良いよ。
メ:俺みたいなのもいるけど(笑)。
と:あ、でも私も実際に作ったのは4年の時。
メ:あぁ、じゃあ周りにしっかりやってた人がいたよって話?
と:そういう人もいたし、実際学校の課題の時にプレゼンボードを作るんですけど、ボードと一緒に自分の作品を作る過程をまとめた簡単なポートフォリオみたいなの作ってた子もいて、そういうの良いなって思いました。形式は本みたいな感じなんですけど、講評の時にパラパラーっと見れるような。自分がプレゼンテーション苦手だったら、違う方向でアピールするっていうのアリだなって思いました。自分にできることを自分なりの表現にしていくって就活だけでなく、デザイナーとして大事。
…ところで、元の話は就職先を選り好みしたって話でしたよね?
と:そうだそうだ(笑)。まだ始まってなかった。就活の最初、私はネガティブ思考な方で、テキスタイル専攻なのに自分はテキスタイルには向いていないと考えてしまって、就職の時には日常雑貨系の会社を受けることにしました。でも、3年生のうちはまだ良いけど、4年になったら卒業制作も始まって、課題と就活に追われもっとヘトヘトになりました。遠方の会社をたくさん受 けていたので、とても疲弊し、課題もままならず教授に叱られさらにヘコみ…。悩んだ結果、卒業してから就活をすることを決めて、課題1本に集中することにしました。1コ上の先輩に、大学にいる間は力を入れて制作しまくって、卒業し てから作品が評価されて、委託でショップに作品を置いてもらって、今では全国に…という方がいたので、そういうスタイルもありだなと思って。
その間に自分を見直して「やっぱりテキスタイルやりたい!」って思い直して、卒制本腰入る前の4~10月の間はテキスタイル系の会社はエントリーしてまし た。気になる会社は、電話なりメールなり、時には直接店舗に行って求人募集がないか問い合わせをしました。ほとんどは良いお返事を頂けなかったけど、でも 直接会いに行って、ものの作り方とか教えてもらうこともあったし、たくさんの製品を見て勉強ができました。それから、業界と職種の理解がなくて落とされてたことに気づきました。「こういうことがやりたい」って自分の希望を言ったところで、会社とマッチングして なければ、意味がないし、自分のやりたいことができるところに面接に行ってなかったから落とされたんだなって分かりました。個人的にやりたいことをやらせ てくれる会社なんてないし、「企業の理念と自分の理念が一致してる」とか、メイトみたいに「あなたたちとなら一緒にがんばれます」とか会社にとって納得のいく説明ができてなかった。会社にとって利益のある人間じゃないと会社は採用してくれないから。
メ:最終的には「自分」と「受ける会社」とどちらを変えたの?
と:「自分」の方を変えましたね。贅沢言ってる場合じゃねぇって(笑)。それで、もう一度「自分の譲れないところ」を考え直しました。その結果、テキスタ イルを極めたいというのと、問題解決が好き、という2点にたどり着きました。問題解決っていうのは、お客さんの要望や依頼を受けて、実際に製品を作る工場 との間のやり取りをうまく潤滑にやってお互いの納得のいくコストで作って行くっていうようなことです。で、「さぁ、もういっかいやるぜ!」って意気込んだところで、超ラッキーな展開になるんですけど、教授が就職先を紹介してくれました。それが、今入ってる会社です。正直、最初は車のテキスタイルって正直乗り気じゃなかったんですけど、よくよく調べると、車のテキスタイルってかなり制限が厳しいんですね。10年使える もので、低コストでって、デザインも良くしろって感じで。テキスタイルもできるし問題解決も求められる仕事 楽しいんじゃないのかな?と考え直して、面接を受けることを決めました。
ありがとうございます
ここで一度、全体に向けてのお話は終了し、それぞれ談笑に移りました。
ボックス在学生たちも先輩とお話できる貴重な時間を有意義に過ごせたようです。
今後も先輩たちとの交流の機会をどんどん作って行きたいと思います!
ブログを見て下さっている皆さまにも、また紹介していきますね。